【ここにいるよ】対談:小住優利子&ナナ【有田逸馬】

インタビュー風景
インタビュー風景

こんにちは。演劇集団LGBTI東京の有田逸馬です。今回は119日(金)~1112日(月)に公演予定の「ここにいるよ」に関し、代表の小住優利子&主演ナナへのインタビュー記事を掲載させていただきます。



「ここにいるよ」あらすじ

高校2年生のあーこは、ある日スマホデビューを果たした。女の子を好きな自分をずっと否定してきたあーこだったが、SNSなどで多くのLGBTの人たちと出会い、自分の気持ちを認め始める。性の多様性や人権問題を絡めつつ、現代の中高生が抱えるLGBT問題をリアルに描く。




主宰 小住優利子
主宰 小住優利子

有田:改めて、劇団の成り立ちについて教えてください。

 

小住:私は元々、中学から演劇をやっていて、その仲間の中にLGBTの当事者もいたんですけど、劇中ではその自分自身のセクシュアリティを偽る表現にどこか違和感を覚えていて。自分自身のセクシュアリティに正直に、LGBTの人も当たり前に存在している物語を表現したいと思って作ったのが、この劇団です。

 

有田:普段はLGBTを直接扱わない作品が多いですが、それはなぜなのでしょうか?

 

小住:うちの劇団でやる演目では、脚本の中でセクシュアリティをあえて言及しないんです。役を演じる人の表現に任せる。だから、うちの劇団がやるのは、LGBTっぽさを全面に出した演目ではないんですよ。シンプルにひとりひとりが自身のセクシュアリティとは関係のないところで葛藤したり、成長したり、そういう物語を演じています。

 

有田:なるほど。では、なぜ「ここにいるよ」では、LGBTを題材にした話を作ったのでしょうか?

 

小住:今回は去年の再演ですが、去年から高校の教科書にLGBTのことが取り上げられるようになりました。それはとても嬉しいことですが、実際の教育現場では分からないことが多く、先生も困っているという話を多く聞きました。そこで、LGBT教材として使える演目があればと思いました。なので、フィクションではなく事実を書かないといけないと思いました。私たちが生のLGBTの話をすることで身近に感じてもらいたいし、実際に今悩んでいる人たちにも「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたら嬉しいです。LGBTではない人にも、「オカマ」など冗談のつもりで言った一言に傷つき、自分のことを言い出せなくなってしまう人がいることを知ってもらいたいです。「LGBTはファンタジーではない。実際にいる人なんだよ。」というのを強く出したいと思いました。

 

有田:それはとても大事なことですね。脚本を書く上で大切にしたことは何ですか?

 

小住:リアリティです。この作品の中で出てくる人の話は、私や、私の周りの人の実体験を元にして作りました。登場人物のルナは、私が高校生のときに出会った人をモチーフにして作ったし、翔は、高校生にありがちでもある“性自認の揺らぎ”を体現するキャラクターとして作りました。性自認の揺らぎは私も経験したことがあるし、高校のころはFtMだったけど今は女性として暮らしている人もいます。でも揺らぐことって普通なんじゃない?というメッセージ性も、この作品に込めて作りました。

作品に出てくる先生は理想の先生というか、こういう風に話を聞いてあげてほしいという例として作りました。

LGBTって聞くと波瀾万丈と思われがちですが、そもそもみんなそれぞれが波瀾万丈な人生なんじゃない?と思っています。

あとは10年前の話を交えることで、世間の価値観の変化を描きました。

 


主演 ナナ
主演 ナナ

有田:ナナさんは今回、主人公のあーこを演じられますが、ナナさんから見たあーこはどのように思いますか?

 

ナナ:自分のことだな、と思っています。中学生のころ、私は本当にあーこのような状態でした。小学校のころ、親友の女の子を好きになりました。彼女と進路が分かれたことが影響したのか、中学では心を開ける友達もいなくて、とても苦しかった。あーこと当時の自分の違いのひとつは、熱中できるものに出会っているかどうかだと思います。私は高校に入って演劇と出会い、熱中し、自分を出せるようになったのですが、あーこは私にとっての演劇のようなものとまだ出会っていない。あーこには「強く生きてくれ」と言いたいです。生きてさえいれば必ず何かに出会い、人と出会って変わっていくことができる。私がお芝居に携わる理由のひとつに、自分にとって遠くに感じていたものを「これって自分のことみたいだな」と共感できるミラクルが、ときに起こるから、ということが挙げられます。私自身、自分を言い当ててくれるような作品に救われてきましたし、心からの共感が偏見をなくしていくことに繋がると信じています。なので、私の使命は、あーこを生きること。お客様に、あーこの目線でご覧いただけたらとても嬉しいですし、あーこの感じる痛みをきちんと受けて、昇華できればと思います。

 

有田:あーこをとても大事にされていますね。あーこのどこに共感しましたか?

 

ナナ:あーこの置かれている状況や悩みも自分そのものですが、10代のときの自分と、性格や行動パターンが似ているなと思います。例えば、緊張が強くて周りの人に対して取り繕ってしまったり、リラックスするのが苦手なところなど。友達はいるけど、心を開ける人は少ないみたいな。

あと、めっちゃアナログです(笑)。文明の利器に疎くて、周りについていけていないところとか(笑)。

 


有田:お二人の考える、この作品の見どころを教えてください。

 

ナナ:最近、LGBTの人が当たり前の存在として出てくる作品が少しずつ増えてきていると思います。しかし、まだまだ「可哀想な人」や「飛び道具」として描かれている気がします。『ここにいるよ』はその点、リアリティがあります。リアルな悩みをお伝えする作品である一方、笑えるところもあって、楽しめると思います。また、「自分のことを受け容れる話」でもあります。セクシュアリティに関係なく、広く共感いただける作品だと考えています。

 

小住:まずは、一人の内向的な少女がスマホによって世界が広がり、いろんな行動をするようになる。その感情の動きが見どころです。スマホって怖い部分もあるけど、インターネットで知る情報は自分の糧にもなるし、希望があるよね。あとは、真面目な話だしリアルだけど、少しコメディチックに書いています。最近LGBTの話は笑っちゃいけないみたいな風潮があるけど、当事者が笑ってほしいならいいじゃんって。もちろん笑いごとではないんだけど、固くなりすぎず、笑いたいときには笑ってほしいんです。リアルなのに笑える劇。

 

ナナ:人間っぽいですよね。

 

小住:そう。あと、70分で7人出てくるんですけど、ちょうど中高の演劇部が真似できるように作ってあるんです。小道具もだいたいのものは各自で揃えられるように、日用品を多く使用しています。うちの学校でもできると思ってもらえたら嬉しいな。LGBTの用語解説もあるし、取り掛かりやすい作品だと思います。

あとは、やっぱり、一人だと思っていても一人じゃないんだよってメッセージが伝わればいいかな。「ここにいるよ」はいろいろな場面で使える言葉だと思います。

 

ナナ:本当にそうかもしれないです。「テレビの中?いや、ここにいます。」みたいなね。

 

有田:まさに「ここにいるよ」ですね。では、演劇集団LGBTI東京の目指すところや、こうありたいというビジョンがあれば教えてください。

 

小住:今はLGBTが社会的に注目され、活動家の方々が様々な声を挙げている姿が目立ちます。今はそういう意味でいいイメージを持っていない人も多いと思います。そんな中で、私たちのやり口でLGBTのリアルや、楽しいこともあるってことを伝えたり、実際にセクシュアリティに悩んでいる人たちにとってのエンタメになれたらいいというのが一番にあります。男女の恋愛が当たり前の世界は描いていないし、自分のセクシュアリティで演じるという姿は、気を張っていない感じがとても共感を持てるポイントだと思います

 

ナナ:その通りですね。私は優利子さんの考え方に共感して、ここにいます。特に「役割分担」ということをよく思うのですが、私は、誰しも自分の能力を活かせないことは不幸だと思っています。お芝居は「異性間のラブストーリー」が主流という状況の中で、LGBTの役者が自分のセクシュアリティを活かせる場所は、まだ少ないです。この劇団では自分のセクシュアリティで演じるので、演じる人によって多様な物語が生まれます。人と違うことを強みとして活かしてもらえるので、皆、自分の得意技、魅力を生かすことができます。そんな「役割分担」を皆が実践できれば幸せなことだと思います。この人生だから生まれるリアルな物語を届けるのは、私の使命だと思っています。私個人としても成長していくために、劇団内外でさまざまに活動していきたいです。

 

有田:最後に、みなさんに伝えたいことはありますか?

 

小住:高校生のとき、セクシュアリティに悩むのは、ある意味、当然だと思います。悩んでいることが悪いことって思わないで、嫌って思わないで。悩むことに意義があるから、もし周りに悩んでいる人がいたら、否定しないで一緒に考えてあげてほしいです。

 

ナナ:そうですよね。アライの方が増えたら嬉しいですよね。私はパンセクシュアルで、セクシュアリティの悩みは人間関係の悩みであることが多いです。どんな性別の人に惹かれても、相手に対して、「私でごめん」と思うことが多い。「私ではダメなんだ」という思いに、風穴を開けられたらと思います。この自分だからこそできることがあるかもしれないということを、伝えられたら。この作品をご覧いただくきっかけは何でもいいと思うんです。とにかく楽しんでいただけたら嬉しいです。エンタメという切り口からLGBTのことを楽しく知っていただけたらいいかな。去年の上演を観て劇団に入ってくれた子たちもいます。この作品の持っている力を信じています。ぜひ、ご覧いただけたらと思います!



初演 2017年 吉祥寺シアターにて
初演 2017年 吉祥寺シアターにて